昭和
昭和の時代は、癒しと安らぎに満ちていたとなつかしむ。 でも当時暮らしていたころは、そんなことは少しも思っていなかった。 狭いスーパーで売っている袋づめの駄菓子は、 たいていはあまり美味しくなかった。 うすっぺらなアスファルトの国道は、穴ぼこや轍でくぼんでいて はやくキレイに舗装されればいいのにと思っていた。 好きな歌手のレコードを何度も聞くから そんなに好きでない曲もなりゆきで覚えてしまった。 工場地帯の煙突から煙がもくもくでている写真には 「ゆたかな産業」というタイトルがついていた。 自分に子供ができたら、誰に教わるでもなく ちゃんと親らしい顔になっていくんだろうと思っていた。 そして世の中はいつも上向きに進んでいて もっとよくなると思っていた。 |